ROOM.1 ジャワ・ハイツ203号室(2)

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 弘は、慌てて頭をさげる。クラスの大半はこれから起こる出来事の察しが付いている。皆、気まずそうに視線を毛の短いカーペットや並べられたAEDへと逃している。 「ッチ」  棚木は短く舌打ちをした。「んだよ」と率先して喧嘩を売ろうとする。暖房がそこそこ効いているはずの夕暮消防署の小ホールは、まるで極寒の戦場のようだ。 「…」  上亮は棚木を一瞥する。  高校生が売った喧嘩なんぞ興味ないという顔を一瞬覗かせてから、低い声で尋ねた。 「ちんポジ気になるんで直しに行っていいスか?」  顔は、どこまでも真剣だった。
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