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ROOM.1 ジャワ・ハイツ203号室(3)
流山の怒号が署長室に響いた。
「棉苗さんッ!!!!あなた自分が何をしたのか分かっているんですかぁ!?」
高校生たちに見せたのとまるで変わらない、ふてぶてしい表情を上司に向けたまま、上亮はTシャツの袖で頬を拭った。流山の唾が当たっていた。声には出さないが、「汚ねぇ」と言う感想をありのまま顔に浮かべる。
流山の細い神経を逆撫するには十分な仕草だった。
「あなたね!!」
「しょーがないですよ、便所で格納ミスっちゃったんで」
居合わせた掃除のおばちゃんたちはハタキで顔を隠しながら失笑した。署長の顔も柔らかい。上亮流のコミュニケーションが受け入れられない流山だけが一人、茹でた蛸みたいになっている。
「内勤の流山さんは知らないかもですけど、ちんポジはストレーナ(※消火栓から水を汲み上げる器具)格納と一緒なんですよ。しまい方間違えると次使う時に手間取りかねな…」
「神聖な消防車とあなたの汚らしいものを一緒にしないで頂きたい!!!」
腹の底から叫んだ反動で、流山は僅かにふらついた。
上亮はその様子を鼻で笑う。鍛え方が足りないと目で馬鹿にする。
「ふふふ」
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