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私は此の世に生まれて初めて親から言われた言葉。
「貴女の命は二分の一」
と、その時の私は幼かったのでよく分かっていませんでした。
だが、その真実を私は今になって分かりました。
今こうして、「死人」となって。
とある夏の日。
日が眩しく照りつける中、私は呑気に歩いていました。ふと、
『なんか目眩がする』
と思いました、けれど私は止まる事なく歩き続けました。
でもどうやらその判断はダメだったようです。
案の定私はその場に倒れこみました。
ふと目が覚めると、私は白いベッドに寝ていました。
「起きたかい?」
誰かの声がする、と思い、そちらの方を向きます。そして、声を出そうと口を開けました。が、何故だか声が出ませんでした。
「無理だよ。声は出せない」
「何故ですか?」と言いたかったのですが、声が出せないのであれば仕方がないです。
「君は幼い頃、初めて親に言われた言葉を覚えているかい?」
勿論覚えています。私は声が出せない代わりに、コクン。と小さく頷きました。
「そうかい。ならば説明なんかしなくても分かるよね」
コクン。私はまた小さく頷きました。
「率直に言うと、君は死んだ。そう、その二分の一の生命によって」
私は死んだのですね。別に驚く事なく私は受け入れました。元から親に言われてたものですから。
「ところで君は、親の顔を覚えているかい?」
親の顔?そんなの覚えているじゃないですか。って一瞬思いましたが、良く考えたら、私は親の顔など生まれた時以外見た事がありません。
なので、私は素直に首を横に振りました。
「それもそうでしょう。親は、君の事を売ったのですから」
一体この人は何を言っているのでしょうか。私が売られた?そんな事があるんでしょうか。でも、この人が嘘を言っているようには見えません。だからきっと本当の事なのでしょう。
「おっと、もう時間が来てしました。もうじき君は死にます」
案外死ぬのって怖くないんですね。逆に気楽です。
「なので、一つだから言っておきますね。親は君の事を大切に思っていましたよ」
私はそれを信じて良いのか分かりませんが、一応頭に入れておきます。
「それでは、さよなら」
私は何故か目が潤んでいました。何故でしょう、私には感情が無い筈なのに。
ただ一つ、私は言いたい言葉、伝えたい言葉がありました。
「こんな短い生命なんて、要らなかったな」
小さな雫を落として、私は消えた。
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