第一章 「二分の一」

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私は此の世に生まれて初めて親から言われた言葉。 「貴女の命は二分の一」 と、その時の私は幼かったのでよく分かっていませんでした。 だが、その真実を私は今になって分かりました。 今こうして、「死人」となって。 とある夏の日。 日が眩しく照りつける中、私は呑気に歩いていました。ふと、 『なんか目眩がする』 と思いました、けれど私は止まる事なく歩き続けました。 でもどうやらその判断はダメだったようです。 案の定私はその場に倒れこみました。 ふと目が覚めると、私は白いベッドに寝ていました。 「起きたかい?」 誰かの声がする、と思い、そちらの方を向きます。そして、声を出そうと口を開けました。が、何故だか声が出ませんでした。 「無理だよ。声は出せない」 「何故ですか?」と言いたかったのですが、声が出せないのであれば仕方がないです。 「君は幼い頃、初めて親に言われた言葉を覚えているかい?」 勿論覚えています。私は声が出せない代わりに、コクン。と小さく頷きました。 「そうかい。ならば説明なんかしなくても分かるよね」 コクン。私はまた小さく頷きました。 「率直に言うと、君は死んだ。そう、その二分の一の生命によって」 私は死んだのですね。別に驚く事なく私は受け入れました。元から親に言われてたものですから。 「ところで君は、親の顔を覚えているかい?」 親の顔?そんなの覚えているじゃないですか。って一瞬思いましたが、良く考えたら、私は親の顔など生まれた時以外見た事がありません。 なので、私は素直に首を横に振りました。 「それもそうでしょう。親は、君の事を売ったのですから」 一体この人は何を言っているのでしょうか。私が売られた?そんな事があるんでしょうか。でも、この人が嘘を言っているようには見えません。だからきっと本当の事なのでしょう。 「おっと、もう時間が来てしました。もうじき君は死にます」 案外死ぬのって怖くないんですね。逆に気楽です。 「なので、一つだから言っておきますね。親は君の事を大切に思っていましたよ」 私はそれを信じて良いのか分かりませんが、一応頭に入れておきます。 「それでは、さよなら」 私は何故か目が潤んでいました。何故でしょう、私には感情が無い筈なのに。 ただ一つ、私は言いたい言葉、伝えたい言葉がありました。 「こんな短い生命なんて、要らなかったな」 小さな雫を落として、私は消えた。
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