私と彼女とあの女

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ニコニコと仕事用の笑顔を顔に貼り付けながら、目の前の彼女に声をかけると「あら、そう。じゃあ休ませてもらおうかしら。おやすみなさい」と穏やかな返事が返ってきた。 一応隣の患者の様子もちらりと見たが、恐ろしい女に食べられること無く、寝息を立てて寝ている様だ。 少しだけ安心して部屋から出れば、今度は別の部屋から「トイレに行きたい」とナースコールが鳴り比較的忙しい勤務となった。 それからあっという間に夜中の二時になり、先輩の看護師から「仮眠行ってきていいよ」と声がかかった。 パソコン画面がチカチカ見えてきていたので丁度よかった。比較的患者も寝入り始めていたので、早々に休憩室の鍵を持ってナースステーションを出た。 この病院は総合病院で、しかも何度か改装工事を行っているせいか各病棟に必ずしも休憩室が備え付けられていなかった。うちの病棟はというと休憩室が無い代わりに病室の一つを潰して、そこを休憩室として利用している。 しかし部屋の構造は患者の病室と一緒だが、テレビもあれば冷蔵庫やソファもあるため、病室という感じは薄い。部屋の一角には患者が使っているのと同じベットがぽつんと置いてあり、そこで夜勤の際には仮眠をとっていた。 私は早速固めのマットレスに飛び込み、仰向けになる。 なぜか仕切りのカーテンもあり、なんとなくカーテンは引いて目を閉じる。     
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