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今は真夜中だ。
普通なら皆が寝ている時間だ。
いつもならもっと早く寝るのだが、この時間まで寝付けなかった。
昼間のことが原因だろうか。腹の底からブクブクと湧き上がる苛立ちで、目が冴えていた。
喉もカラカラで、水を飲むために薄暗いキッチンへ向かった。
キッチンに行く途中、リビングの前を通るのだが、リビングに人影が見えた。
リビングの窓から差し込む白金の月の明かりの中、男は日本の蒼白い着物に鉄色の袴を着ていた。
男の横には何か棒のようなものがおいてあった。
その棒は日本の時代劇に出てくる刀のようであった。
そんな男がうちのリビングのソファーに腰掛けていた。
窓から入ってくる青白い月明かりを受けて浮かび上がるその姿は何か神秘的な感じがした。
誰?泥棒?でもこの格好は......
そんな事を考えながら男を見ると、男の強い眼光がスヒョンの目を捕らえた。
『わしが見えるんか?』
え?どういう......意味......
スヒョンは、男の紅の唇から発せられる音、地面の底から絞りでてきた声に身動きができなくなった。
『見えるんだな』
男はふわりと音もなくスヒョンに近づき、静かな声でそう言った。
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