表題壱、幽霊

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 確かに婆さんが作ったもののようだ。お母さんであれば、昭和云々というよりもパンやオムレツにコーヒーなんかが並ぶ洋食になる。特に味噌汁なんてものは作っているのを見た事がない。 「やっぱりこれって婆ちゃんが作ったのでござるか?」  婆さんを見つめる矢依。 「やだよ。さっきもそう言ったじゃないか。婆さんが朝食を作ったってな」  と婆さん。 「ともかく食べよう。話はそれからじゃ」  と爺さんが手を合せた。  そうして幽霊である爺さんと婆さん、そして矢依の三人で不可思議な朝食を食べた。  矢依は考える。  爺さんと婆さんが見えるって事はやっぱり拙者は死んでいて後悔があるからこの世から離れられないのでござろうな。ただ幽霊が朝食を作るなんて話聞いた事がないし、それ以上に食卓を囲むなんて論外じゃないんでござろうか。しかも学校に遅れるわいとまで言われちゃってるでござるし……。  拙者は本当に死んだのでござろうか。  そして爺ちゃんと婆ちゃんも本当に死んでいるのであろうか。  幽霊なんでござろうか。  とほかほかで白い湯気を上げる白米に納豆をかけて思いっ切りかき回した。
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