13.No Regret

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オロオロする私とは真逆で、 茶色は俊敏に動き出す。 「てことは、男子トイレか」 「ええっ、なんで分かるの?」 いくら屈強な男でも、 嫌がる成人女性を連れて正面から出れば、 目立つに決まってる。 この店の駐車場には数人の警備員が 常駐しているから通報される可能性大だ。 取り敢えず男子トイレへ連れて行き、 空のダンボールにレミちゃんを入れ、 購入した商品と見せかけて 運び出すのが手っ取り早い。 …と、彼は走りながら説明してくれた。 「このテの店の男子トイレって、 あまり使用されないからな。 ん?何だよ、入るぞリナちゃん」 「う、なんかちょっと躊躇しちゃって」 初潜入の男子トイレに ドキドキしている場合では無い。 静かに進むと掃除用具入れの前で 例の男がこちらに背中を向け、 ゴソゴソと作業をしていた。 「ふん、むううう」 あ、怪しい。 明らかに女性の声が漏れ聞こえてくる。 『ビンゴ!』 茶色が小声で言い、私も小さく頷く。 ベベベッとガムテープを貼る音。 「…アレク?これで大丈夫か」 大きな背中からヒョコッと出て来た 細っこい体型の男子。 その顔をじっくり見つめると…。 「か、和道くん?!」 「うわああッ」 ナカダ氏と血の繋がらない弟・和道くん。 予想通り彼らの前には、 大きなダンボール箱が置かれている。
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