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しかし――。
ズダダダダ……。
突如、青空に響く銃声と共にまさかりの壁が崩れた。
「どうした!」
「マタギです!」
報告に駆け付けたのはまさかり部隊の小隊長、五浦秋人少尉である。
「青天の霹靂弾による銃撃! 重傷者多数!」
事前の情報では津軽軍はマタギを抱き込むことに難航していると聞いていたが、どうやら我々の侵攻に間に合ったらしい。石川は下唇を噛んだ。
加えて、青天の霹靂弾。青森県が誇る高級米品種「青天の霹靂」を銃弾として転用することで、弾薬供給の不安が解消されている。片手にすくっただけの米でも数百発分にもなるからだ。非常時には兵糧にもなる。
軽い米粒に攻撃力を与えるために専用の銃が必要であるはずなのだが、こちらもすでに実戦配備されていたらしい。事前情報と随分異なる。
「大盾隊! 前へ!」
石川の指示は早かった。縦二メートル、横一メートルのキャスター付き鉄の大盾を押しながら、十人の兵がずらりと並んだ。そしてその大盾十枚を、隙間なく構える。
青天の霹靂弾は、その南部鉄器の大盾を打ったが、軽い音で跳ね返される。
「おお! さすがは南部鉄器! 米など相手になりませんな!」
五浦は驚嘆の声を上げた。
「七戸町役場まで退却する」
石川は言った。予想外の青天の霹靂弾により、こちらも大きな損害を受けた。また、マタギと青天の霹靂弾のことを三八城公園(八戸城跡)に構えられた本陣まで早急に伝えねばならない。
大盾隊でまさかり兵たちを守りながら後退。奥州街道まで引き返したが、津軽軍は追っては来なかった。今回交戦した縄文人とマタギ部隊の任務は、あくまでも国境守護のみのようだ。
こうして、後に第一次みちのく会戦と呼ばれる、最初の激突は幕を閉じた。
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