第二次みちのく会戦

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 沢村瑞穂(みずほ)中尉は、三十騎の騎馬隊を率い、第一まさかり中隊が駐屯する七戸町役場へと猛進していた。五戸が馬刺しで有名なだけあり、南部地方には優秀な軍馬が揃っている。そして上空にはウミネコが三十羽、騎馬隊に追従していた。  第一次みちのく会戦に関する情報はすでに伝わっている。青天の霹靂弾による遠距離攻撃。これは南部鉄器盾を使えば容易に防げる。  しかし、逆に言えば、常に大盾隊が並んでいなければならないということである。重い盾を前線に並べた状態では圧倒的に進軍速度が鈍る。また、遠距離攻撃手段を持たない第一まさかり中隊のみでは、敵の数を減らすことができない。いずれ、機動力の高い縄文人部隊に背後を突かれる。大盾隊は背後からの攻撃には極めてもろい。  そして最大の懸念が、津軽の誇るリンゴであった。リンゴ砲――。もちろん、リンゴを使った砲弾も南部鉄器盾を破壊することなどできはしないが、リンゴは米よりもはるかに質量が大きい。砲撃を受ければ、盾を支える人間の腕の方が耐えられない。  沢村の率いる騎馬隊は、まさかりではなく、みなディスクシューターという飛び道具を携えていた。名物の南部せんべいをフリスビーのごとく回転させながら高速で射出する。さながら、現代型の騎馬弓隊であった。
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