第二次みちのく会戦

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 七戸町役場に到着した沢村の隊は第一まさかり中隊と合流した。  まず沢村が行ったのは、初戦を終えたまさかり兵の体力回復であった。 「石川大尉もどうぞ」  そう言って沢村が手渡すのは「ジャッツ タッコーラ」。田子(たっこ)町産にんにくをふんだんに使用したコーラである。  石川はそれを一息で飲み干す。口に入った瞬間はただのコーラ。しかし、あとからにんにくがやってくる。胃の中から鼻へと、にんにく風味が込み上げてくる。  騎馬隊が持参したタッコーラを皆に配り終えて五分後、第一まさかり中隊全軍は、初戦の消耗など何事もなかったかのように全快していた。   「佐々木中佐が酸ヶ湯(すかゆ)温泉経由ルートにて、弘前城に向け進軍を開始いたしました。また上野少佐の本隊も進軍中です」  沢村は言った。  酸ヶ湯温泉経由ルートとは、十和田、八甲田山を越え、青森市を通らずに直接弘前へと向かうルートである。  上野祐輔(ゆうすけ)少佐は石川や沢村の直属の上官だ。すなわち石川率いるまさかり中隊が先発隊、沢村の騎馬隊が最速の援軍、そして上野の本隊が後詰である。 「上野少佐の伝言です。『本隊到着前に、みちのく有料道路を落としておけ』とのこと」  青森市を落とし、二人の佐官級将軍率いる大軍で二方向から弘前城を陥落させるのが、南部の描く絵である。そのためには速やかに国境警備を撃破する必要がある。 「少佐に尻を叩かれては仕方がない。行くか」  石川はまさかりを担いで言った。
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