封印エレベーター

3/8
前へ
/8ページ
次へ
 私のシフトは基本的に平日の夜だったのですが、「悪いんだけど今週の土曜日さ、どうしても人が足りないから、1日通しで出てくれないか?」とOに頼まれて、私は快く引き受けました。  ランチタイムは1階のテーブル席がメインなので、楽だったことを覚えています。  午後2時から5時までの3時間は少し長い休憩時間になっていて、店長を含めたほとんどの従業員は近所に住んでいるため、一度帰宅していたのですが、その日は雨が降っていたこともあり、私は家に戻るのが億劫になり、店に残ることにしたのでした。 「あれ? 店に残るの?」Oが声を掛けてきました。 「はい。昼寝でもして時間を潰します」 「そう。じゃあ、俺も残ろうかな」  こうして私とOは、二人きりで店に残ることになったのです。  店長は金にシビアな人で、休憩時間は店の電気やエアコンは全て止めていました。雨天だったこともあり、店内は極端に薄暗く、昼間の賑わいが信じられないくらいに気味が悪いのでした。 「2階の部屋は畳になっているので、そこで休みませんか?」私は提案しました。 「いや、それはヤメた方がいいよ」Oはすぐに却下しました。 「・・・・・・なんでですか? 横になったほうがラクですよ」 「2階に行きたければ行けばいいよ。俺は1階で休む」  そう言うと、Oはテーブル席の椅子を並べて簡易なベッドを作り、その上で横になって休んでしまいました。 「勝手に2階を使うと店長がうるさいんですか?」  私はどうしても納得がいかなく、硬いベッドで寝ているOを見下ろしながら聞きました。 「理由が知りたいか?」 「はい」私は笑顔で返事をしました。 「他のバイトには絶対に言うなよ」 「言わないです!」私は真顔に戻し、口をキツく結びました。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加