NY地下鉄トークン

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見上げているのは、四ツ谷の青空ではなくて、アメリカはハワードビーチ駅前の夜空だ。 空は確かに地球の裏側まで繋がってる。空の色に国境はないから。 「本当に1人で来れたんだねー」 「私もそう思っちゃった。初めてのひとり旅が海外なんて、無事に着いたのが奇跡的みたいな。 ねえ、着てる服ラフ過ぎたかなー、羽田で図らずもシンガポール行きに誘導されそうになっちゃった。」 「女の子のひとり旅にしちゃ、構えがなさ過ぎるかもな。荷物これだけ?さて、」 岡崎先輩は、私のボストンバックをひょいっと肩にかけると、沢山の人の往来の真ん中で私をハグした。 「先輩…ちょっ…」 「ん?ここはNYだよ?」 「あ…歩きましょう?周りの邪魔かも」 四ツ谷では、オープンに手を繋ぐことも無かったのに。岡崎先輩はくすっと笑うと 「ホテル、どこだっけ?」 「あ、ホテルじゃなくて、ドミトリーなの、カトリックの。」 「地図見せて?あー。地下鉄に乗って14丁目か。」 手を繋いだ。 「待って、地下鉄だったら、私、持ってきた。」 「何?」 「先輩からもらったお守り。トークン。」 手を繋ぐのがまだ少し落ち着かなくて、いそいそと財布からコインを出して見せた。 「ほら。これ入れてゲートを抜けるんでしょ?使ってみたい。」 遊園地気分を ククク… 先輩は笑う。 「これね。懐かしいなー。お守りなんて言ったっけ。」 「うん、無事にNYに戻って来れますようにって、旅行者は1枚財布に入れて持って帰るって」 「素直だなー。」 「え?でもこうして無事に」 「トークンはもうアンティークだよ。飾り物。今はNYもメトロカードだ。」
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