NY地下鉄トークン

8/10
前へ
/10ページ
次へ
「そういうところが面倒なんだよ、なんでも自分でできます、やっちゃいます、隙だらけです、でも助けてもらわなくても平気ですって。自分で自分の責任取れる?」 「そこまで言われなくても分かってるから。衝動的に来ちゃったことは反省してる。これ以上親切にされたら惨めになるし、思わせぶりなことしないで。」 「思わせぶり?勝手に勘違いしてるのは誰だよ!」 隣に座った女の人が 「ここに日本語分かる人もいるヨー」 と呟いた。その口からキムチの匂いがした。 「ドミトリーには電話入れとけ。心配されるといけない。俺んとこに連れてく。」 「やだ。誰かいるんでしょ?」 「仕方ないじゃないか。お互い女を連れ込まないルールだったけどな。お前がヤケを起こす方が深刻だ。」 隣の女の人は、あらあら、とまたキムチの匂いをさせた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加