港町

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遊んであげるからと言ってなんとか起きていてもらうが、最近お気に入りの小さなボールを追いかけて遊ぶのはちょっと疲れる。 「雪翔坊っちゃま、夕食の前にお風呂にと那智様から言われておりますので」 「あ、はい。あの……」 「大丈夫でございます。必要と思われる箇所には手すりがつけてありますので」 「良かった!」 着替えを持って一階のお風呂場に行くと、黄色い浴衣のようなものを着た女性三人がいて、世話をしてくれるというので丁重にお断りをする。 「那智様に叱られます」 「お風呂は一人で入るよ……」 「では、せめて上がられてからの足のマッサージだけでも……」 すべて嫌というわけにも行かず、先にお風呂に入らせてと中を見ると、海が見えるお風呂でどこかの旅館のお風呂のように広かった。 「ここから見える島も一つかぁ。何処にあるんだろう?」 「失礼致します」 「重次さん?」 「手すり、お湯加減はいかがですか?」 「うん、丁度いいよ?ねえ、あの島って他に四つない?本には五つって書いてあったんだけど」 「あの五島は、昔の大津波で沈んでしまい、今は海底にあるそうです。私も見た訳では無いので詳しくはわかりませんが……」 「そうなんだ。主様っていうのは何?」 「人の世界で言う、イルカのことだと聞いていますが、本によっては鯨やシャチと書いてあるものもありますので、どれが本当かまでは……」 「言い伝えは言い伝えかぁ」 「あの場所の周りは泳ぐことも禁止となってますので、余計に謎のままです」 「そうなの?こっちの世界では誰かが調べるとか無いの?」 「あまり耳にしません。天狐様ならばご存知かも知れませんが」 「だよねぇ……」
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