1777人が本棚に入れています
本棚に追加
遊んであげるからと言ってなんとか起きていてもらうが、最近お気に入りの小さなボールを追いかけて遊ぶのはちょっと疲れる。
「雪翔坊っちゃま、夕食の前にお風呂にと那智様から言われておりますので」
「あ、はい。あの……」
「大丈夫でございます。必要と思われる箇所には手すりがつけてありますので」
「良かった!」
着替えを持って一階のお風呂場に行くと、黄色い浴衣のようなものを着た女性三人がいて、世話をしてくれるというので丁重にお断りをする。
「那智様に叱られます」
「お風呂は一人で入るよ……」
「では、せめて上がられてからの足のマッサージだけでも……」
すべて嫌というわけにも行かず、先にお風呂に入らせてと中を見ると、海が見えるお風呂でどこかの旅館のお風呂のように広かった。
「ここから見える島も一つかぁ。何処にあるんだろう?」
「失礼致します」
「重次さん?」
「手すり、お湯加減はいかがですか?」
「うん、丁度いいよ?ねえ、あの島って他に四つない?本には五つって書いてあったんだけど」
「あの五島は、昔の大津波で沈んでしまい、今は海底にあるそうです。私も見た訳では無いので詳しくはわかりませんが……」
「そうなんだ。主様っていうのは何?」
「人の世界で言う、イルカのことだと聞いていますが、本によっては鯨やシャチと書いてあるものもありますので、どれが本当かまでは……」
「言い伝えは言い伝えかぁ」
「あの場所の周りは泳ぐことも禁止となってますので、余計に謎のままです」
「そうなの?こっちの世界では誰かが調べるとか無いの?」
「あまり耳にしません。天狐様ならばご存知かも知れませんが」
「だよねぇ……」
最初のコメントを投稿しよう!