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老人は懐かしそうにメニューを見る
メニューが決まったのか、左手の人差し指でトントンと机をたたく
秘書は机に置いてある鐘を取り鳴らす
チリンチリーン
鐘を鳴らすと、奥から執事が現れ一礼する
「クラウス、まずは20歳だ、60年前の6月21日に行こう」
「かしこまりました、旦那様」
執事は一礼し、運転席に向かう
[それでは当列車はこれより○○20年に参ります、到着時間は15:00それまでごゆるりとおくつろぎ下さい]
アナウンスが流れる
列車がゆっくりと動き出す
秘書は列車が動きだし揺れが少なくなると、左にあるワインセラーからワインを選び取り出す
「こちらいたしましょう、○○20年製ヴィンテージワイン、そしてヌーヴォーでございます」
秘書は小さなワイングラスを2つ出すと、1つはヴィンテージ、1つはヌーヴォーと3分の1ほどワインを注いだ
老人はヌーヴォーグラスをとりゆっくりと回し、少し口に含む
「早いな、そして若い、瑞々しくフルーティー、勢いで勇んでいたあの頃だ」
次に老人はヴィンテージワインをとりゆっくりと回す、色を楽しみそして鼻を近づけ香りを楽しむ
「これは、みなで味わおう」
「かしこまりました」
秘書はグラスを2つ取り出す、ワインを注ぐ
「アルフォンスにも後でな」
「では、御夕食に御出ししましょう」
老人の言葉に秘書は優しく微笑み、ボトルをワインセラーに戻す
執事を呼ぶと、老人は右に座る様に促す
「よい、無礼講じゃ」
執事は小さく一礼し右のソファーに座り、秘書からグラスを渡される
老人は、2人がグラスを持ったのを確認する
「3人で飲んだ事など初めてではないか?なあ?クラウス」
「そうですね、私は小さい頃より旦那様に仕える身でしたから、とても光栄にございます」
「堅苦しいな、クラウスよ」
老人はハッハッハッと大きく笑い、執事はそれを見てフフッと笑った
秘書は2人のやり取りを優しく見守っていた
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