地下鉄に乗って

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老人は遠い目をしながら続ける 「想像したか?現実は想像以上だった、父上の信頼を損ね上役との関係も数年はうまくいかなかった、この日は間違いなくワシの変えたい過去だ」 話をしていると、執事が戻ってくるスーツを一式揃えたようだ 「お待たせいたしました」 「立派なドレススーツである」 老人は満足そうにうなずく 満足そうな老人とは対照的に運転手はある問題を考えていた どう着せるかである 着てくださいと言って着るだろうか? 老人は考える運転手を見て笑う 「アルフォンス、お前ならどうする?」 運転手は色々考える、だがスマートな方法が思い付かない、多少荒っぽくなる、運転手は考え付く一番スマートな手を口にする 「お爺様が……説得なされるのが一番かと、ここはお爺様の過去ですから、もしかしたらすんなり着てくれるかもしれません…駄目だった場合は、3人で無理やり…かと」 老人は運転手の考えに、笑う 「ハッハッハッ、それでは新しい後悔が出来てしまうな!」 運転手はハッとする 「勉強しなさい、答え合わせだ」 老人はそう言うと、執事と秘書になにやら話す 執事と秘書はうなずくとスーツを持ち、2人でお店の通り道の小さな路地に入る 少しすると通り道の先から黒の革ジャンを着た若者、顔立ちはアルフォンスにそっくりである 「見ておれ」 老人はニヤッと笑う 運転手は真剣なまなざし 若者が路地の近くに来ると、執事と秘書がスッと現れて行く手を阻む 警戒する若者 「フレデリック様、お待ちを」 秘書が若者の全身を確認する 「なんだ?あんたたち?何か用か?俺は急いでいる、退いてもらおう」 秘書と執事を避けようとする 「そのようなお姿ではお通しするわけには参りません、こちらを」 執事がスーツを若者に見せる 「今朝旦那様がおっしゃったはずですが?後継者に相応しい服を着てこいと」 「父の使いか」 「時間がありません、こちらへ」 路地裏に入り執事が壁になる 数分後 オシャレなドレススーツを着た若者が路地裏から現れる ツヤ感のあるスーツが上品さと艶やかさ、高級感を演出している どこからどう見ても後継者として相応しい姿である 「ご無礼をお許し下さい、それでは、お気をつけて」 秘書と執事は一礼する 「助かった」 若者はお店に入っていった
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