第七章 『祭りにて、今』

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 人は多く、私達の間に会話はないが、美味しそうに食べる宝君を見て私は一人嬉しさを感じた。  その後、かき氷を買って近くのベンチで食べていると、宝君がスプーンをこちらのかき氷にさしてきた。  一口ほしいとの意味のようで、かき氷を差し出すと、宝君のかき氷も一口もらう。  まだまだ不慣れな感じだが、私はこうして宝君と一緒にいられたらいいな……と、仄かに思っていた。  この気持ちを、いつ伝えよう。どのタイミングで、伝えよう。  しかし、思うように言うことはできずに、早夕暮れ近くなると、帰ろうかと言われてしまった。  胸を張って踊ることのできた今日、伝えたいと思っていたのに、それはもう無理なのだろうか。  宝君と一緒に土手を歩きながら、バス停を目指す。  言いたいのに、言えない。こんなにもどかしい気持ちは初めて。  “ちょっと話して帰ろうか”  土手の下で野球をしている子供達をぼんやり見ていると、宝君が目の前に携帯の画面を見せてきて、土手の途中に座る。  夕日に照らされた芝生が、淡い黄色に変化しており、夕風に揺られている。  もう無理かと思ったが、これはチャンスかも……。  ゴクリ、と唾を呑み、私は意を決して宝君に向き直る。  だが、タイミングよく宝君もこちらに向き直って、お互い気まずくなってしまった。  ん? となり、私が首を傾げると、宝君の方がゆっくりと手話をする。
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