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最終章 『貴方と一緒に、踊りたい』
~轟翔馬~
七月になり、にきと宝先輩が付き合っているのも、当たり前になってきた。
しかしそれは、俺と舞子ちゃんだけが秘密で知っていることだったのだが、俺がポロッと瞳先輩に言ってしまってから、すぐに部内に噂が広がった。
だが、左程驚かれなかったのは、周りから見ても、にきと宝先輩は雰囲気良さ気に見えていたのだろう。
にきは、毎日とても幸せそう。
踊っている姿は、まるで美しいシンデレラのよう。
にきは毎日宝先輩と帰るようになって、俺は舞子ちゃんと二人になることが多くなった。
“まだにきのこと引きずってる?”
舞子ちゃんの家の前まで来ると、手話をしてきた舞子ちゃんに、俺は苦笑する。
“そりゃあ、長年想ってたからね”
“長年の片想いは、私も同じだけれどね”
言って、舞子ちゃんはカラリと笑う。余裕の笑みだ。
“とりあえずさ、今度二人で会えない?”
今から頑張ってもいいか、と言ってきた舞子ちゃんは、最近積極的。
“そうだね、うん。どこか行こうか”
“やった、約束だからね”
梅雨に入り、さっきまで雨が降っていたが、雨は上がり夕空に薄い虹が出ている。
そろそろ俺も一歩を踏み出さないとな、と思えるようになっていた。
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