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専業主婦の母に送り出されると、私は徒歩通学で十分先にある聾学校へ向かう。
私の通う学校は、小学部からずっとこの聾学校である。人数は小学部から高等部まで全員で六十名ちょっと。市外から通う生徒もいる、この辺りでは大きな聾学校だ。
軽度から重度、聾唖など障害は様々だが、メンバーは小学部からずっと同じで皆仲が良い。
『にき、おはよう』
教室に入ると、友達の橋詰舞子が笑顔で声をかけてくる。
高校二年、四月。クラス替えなどなく、私のクラスには昨年と変わらず五名の同級生がいる。
五名のうち三名が男子生徒で、女子生徒は自分と舞子の二人。舞子は私の親友である。
『にき、数学の課題した?』
『したけれど……あ、もしかしてまたサボってる?』
『お願い、見せて』
自分とは対照的に積極的で、お調子者の舞子。
だが、舞子なしでは、今の自分にはなっていなかった。
『にきは頭良いから、頼りになるんだよね』
『もー』
何でもしようと真剣に取り組んだら、舞子は簡単にできちゃうタイプ。
だから、何だか勿体無い。
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