77人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、第一高校の門の前で集合しよう、と翔馬に言われた翌日。
私は嫌々舞子に事情を説明すると、案外乗り気であんぐり驚かされた。
『いいじゃん、行ってみようよ。翔馬の誘いならさ』
舞子は明るく元気で、難聴の難度も中度。難度を言い訳にするわけではないが、だからこそ自分より積極的になれるんだと羨んでいた。
難聴を理由に、舞子がネガティブなことを言っているのは聞いたことがなくて、そこを見習わないのは分かっているが、どうしても渋ってしまう自分がいる。
私は硬い殻を、中々破れないでいた。
『……私は、あまり行きたくない』
本音を零すと、舞子は両手で私の頬をムニムニと伸ばしてくる。
「いっ……」
難聴であっても声が出ないわけではなく、私の微かな声が響く。
発音の練習は、小さな頃からもう嫌になるくらいしていて、話せないわけではない。
ただ、自信がなく普段話さないで手話を使っているだけ。
『行ってみようよ』
『でも……』
『何かのきっかけになるかもしれないじゃん』
『何かって』
最初のコメントを投稿しよう!