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そう言って、翔馬が体育館の扉を開いた瞬間、初めて見る、衝撃的な光景が目の前に広がった。
──す、凄い、踊ってる……。
一組の男女がペアを組み、館内を行ったり来たり、クルクル回ったり、シャキッとポーズを決めながら軽快にダンスを踊っている。
私と舞子は入り口で、あんぐりと口を開けて立ち尽くしたまま、その様子をただただ見つめるばかり。
社交ダンスなんて、名前を聞いたことがあるだけで、全然知らない未知の世界である。
確かにあれはカッコ良い、カッコ良いのは何物でもない、事実である。
でも、あんなの、私にできるはずがないじゃない……。
キビキビ動いているのに、男女とも優雅で余裕があり、二人見つめ合っている。
『な、凄いだろ』
肩を叩かれ隣の翔馬を見ると、目をキラキラさせながら話をする。
翔馬が社交ダンス部に興味を持ったのは、何となく理解できた。私も耳が聞こえていたら、前向きに魅力を感じれたのかもしれない。
一応コクリ、と頷いたまま固まっていると、やがて音が鳴りやんで、一人の男子生徒が私達に近寄ってきた。
「──」
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