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少し肌寒い。上着を持って来なかったことを僕は後悔した。あまり長いこと外にいると身体が冷えてしまいそうだ。
僕は地下鉄の駅に向かった。随分歩いたと思う。僕の横をいろんな人が通過し、僕はいろんな看板の前を通過した。看板は色とりどりで、大きさも様々だった。いろんな店があったし、いろんな人を見かけた。しかし、どの看板にも僕が求めいてる情報は書いていなかったし、誰も僕に答えを教えてくれなかった。誰もが僕と無関係だった。彼らはみんな風景以上の意味を持たなかった。そして、もしそれらの風景が僕の心を温めたり、慰めたりしてくれないというのならば、一体その風景にどんな意味があるというのだろう。
駅に着く頃には、僕の身体はすっかり冷え切ってしまっていた。酔もほとんど醒めてしまっている。駅の中でもやはり沢山の人とすれ違ったが、彼らは一様に早足で不機嫌そうだった。街で見かけた幸せそうな人々は何処へ行ってしまったのだろう?
もしかすると幸せな人達は電車を使わないのかもしれない。
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