263人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
熱い手が腰を浮かせた自分の腕を掴んで止めた。
「若…」
触れてもらえる価値はない。
自分は汚れてしまった。
若の手を解こうとしてその手に力が入ったのを感じて若を見る。
「俺が…嫌いか…?」
そんなわけない。
誰よりも大切な人だ。
好き嫌いという感情を越えてしまってる。
「若…、わたしは」
「俺は極道だ。…ひどい世界からおまえだけは守りたかった。守れず怖い思いをさせた。…嫌われても仕方が、ない」
違う。
そうじゃない。
若の手を握り返して若の体を支えた。
「わたしには若だけです。どんなことがあっても」
「…榊」
嫌いになれません。なれるわけなどありません。
告げて若を横にしてそっと若の頬を擦った。
「ずっとそばにおります。安心して眠ってください」
「おまえ…」
「今、氷を替えてきます」
最初のコメントを投稿しよう!