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初めての感覚―――
主に振り上げた得物は不自然な態勢から床に落ちた。
男は何が起こったのかわからない表情をして振り返った。
「…何を、した?」
ぽた、ぽた、
床に赤いシミが落ちる。
「若を傷つけたあなたをわたしは許しません」
縄を切って引き千切り主に振り上げた得物を持つ脇腹に、握っていたものを思い切り突き立てた。
脇に刺さる鏡の欠片。見事にくい込んでる。
脇腹がじわじわと染まってく。
「やっとわかったんです。わたしが誰のために生きるのか」
自分の手を汚しても守りたいもの。
この身を投げ出しても守りたいもの。
それが今わかった―――
「わたしの若を傷つけた者は誰であろうと許しません」
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