0人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは高校1年の秋のことでした。
私の通っていた高校は、田舎の山の中に建っていました。
学校は木々に囲まれ、夜になると真っ暗で、星が綺麗に見えるような所でした。
私が入っていた部活は学校の敷地の1番端、すぐ後ろが山という場所にコートと部室がありました。
秋は日が落ちるのも早くなり、部活の終了時刻夏より1時間早い18時に。
けれどもう少し練習したかった部員たちは顧問の先生にお願いして、30分だけ自主練させてもらうようになりました。
私もその中の1人でした。
いつもは5~6人ほど残って練習していくのですが、その日は私と女子部員が2人の3人だけ。
男子部員は全員先に帰ってしまいました。
30分の自主練を終えて、後片付けをしてから部室で着替えをしました。
部室を出ると、外が真っ暗でびっくりしたのを覚えています。
いつもは19時過ぎまで練習している野球部の照明のおかげで結構明るかったのですが、その日は練習が早く終わってしまったのか照明が消えて真っ暗だったのです。
今思えば、いつもと違うことばかりの変な日だったんです。
「うわー、真っ暗だね。」
なんて言いながら、月明かりだけが照らしている薄暗いコート横の道を足元に気を付けながら歩いていました。
すると、どこからか人の話し声が聞こえてきたのです。
何を話しているかまではわからないくらいの小さな声でしたが、私たちはみんなはっきり男の人の話し声だということだけはわかったのです。
初めは野球部や他の部の男子部員の話し声が反響でもしているのかと思いましたが、どうやら山に入ることの出来る獣道のようなのところから声が聞こえてくるような感じがしました。
この時期、近所のお年寄りが山菜取りに来て、うちの高校の敷地に入ってくることがあるということを先輩たちに聞いていた私たち。
もしかしたら、おじいちゃんが迷い込んでいるのかもしれないと思いました。
私たちは獣道の方に歩いていきました。
けれど、人の姿は見えませんでした。
それどころか話し声が近づく感じもしなく、ずっとどこか遠くから聞こえてくるような変な感じがしました。
不気味な感じがして、私たちは足を止めて顔を見合わせました。
最初のコメントを投稿しよう!