錯覚

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 まだ居たんだよ。  しかも今度はハッキリ顔が見えそうだった。  私は全速力で自分の部屋に向かって走った。    部屋に入って布団の中に潜り込んだら、目をギュッと瞑ってジッとしていた。  あれは錯覚なんだ。何かが人の姿に見えただけなんだって必死に思い込もうとしたよ。  しばらくそうしてて、もう大丈夫だろうと思って目を開けてさ。  目の前に無表情の男の顔があったから、本当にびっくりした。  私は布団から這い出て、半べそになりながらお母さんのところへ行ったっけ。  その夜はお母さんと一緒に寝たよ。  そんな事があったのはそれっきりだし、この話もこれでお終いなんだけどね。  それにしても、布団の中にまで入って来るなって言いたいよねぇ。  絶対の安全地帯じゃん布団って。  おっと。あれは錯覚、錯覚。  
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