不思議な切符

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かずは色々な話をしてきた。最近の出来事とか、昔の思い出話とか。最近会ったと言っていたのはかずの飼ってた犬だった。大型犬でおっとりしてて、かずによく似た犬。ついこの間寿命で息を引き取った。久しぶりにボールで遊んだのだと、嬉しそうに話していた。 「ゆうちゃん、学校どう。」 四年前と変わらない優しい声で、かずは話す。かずが死んだのは四年前、中二の時だったから、かずはきっとまだ中二なのだ。もう絶対、高校生にも大学生にもなることは無いのだと、かずの、小さい体を見て思った。生きていたら、県内1位の高校だって行けたはずだけど。 「受験一色だよ、大学受験。」 そう答えると、かずは微笑んだ。かずは頭がよかったから、生きていたらきっと、大学も俺が今受けようと思っているとこよりもっとずっといいところに行ったのだろう。 「そっか。大変なんだね。それできっとゆうちゃん頑張りすぎちゃったんだ、クマできてるし。」 「そんなことないよ。全然、偏差値上がらなくて。」 体育座りをして俯いていると、かずは、どこからだしたのか暖かいお茶をいれてくれた かずは、どこをとっても優しい奴だった。 「ゆうちゃんは、努力家だからなあ。いっぱい出来てすごいと思うよ、だけどね、それで追い込み過ぎたら駄目だよ。ゆうちゃん、自分で思ってるより脆いんだからさ。」 「かず、俺、駄目だよ。全然できてないんだ。最近何も出来なくなっちゃって、」 かずは笑う。どこかぎこちない。いや違う、泣きそうな顔なのか。電車からプシューと音がした。かずは、ああ、もう時間が無い、とつぶやくと、俺を立たせて、抱きしめ、そして無理矢理電車の中に押し込んだ。 「ねえゆうちゃん、僕、ちゃんと見守ってるから。もうこんなとこ来ちゃダメだよ。」 「かず?かず、それ、どういう意味。」 電車のドアが閉まる。さようならバイバイ、もう来ちゃダメだよ。そう叫ぶ声が聞こえた。 窓越しに見えたかずは、泣いていた。
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