第壱話 『鳴 祭』

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―3― 「おじさんッ!」 僕が叫ぶと、おじさんも叫んだ。 「元気でなぁ!それと必ず伝えてくれよなぁ…! のんちゃん、意外と泣き虫だからよぅ……」 小さくなって行くおじさんが手を振っているのがみえる。 僕の腕は妙に重かったが、無理矢理手を上げて、力一杯手を振った。 ――…… そこで、ストン、と辺りが真っ暗闇になった。 遠くで祭りの声がまだ小さく…… 微かに 闇の中で木霊していた。 ――…… 青い光と、小さな鳥達の規則的な鳴き声が、 窓ガラスをすり抜けて降ってくる。 ベッドの上から時計に目をやるとまだ明け方の5時だった。 ……流石に二度寝する気にはなれなかった。 遠くの空に青灰色の美しい雲がたなびいている。 「おじさん……」 僕は思わず呟いた。胸が痛んで自然と涙が溢れた。 おじさんは…… 何週間か前に……   ……亡くなったんだった。
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