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―4―
正直、出勤してからこの話しを、社長にしようか・するまいか僕は迷っていた。
いつもの出勤路を相も変わらず自転車で進んでいく間も
ずっとその事ばかり考えていた。
……話すべきか・話さざるべきか……
社長は以前から僕がこのテのカン…と言うか…そういう世界に縁があるコトを知っている人だったが、なにせ相手が相手、事が事である。
当然、軽々しく口にする話しではナイが故に、言い出し辛いし、流石に「人の死を茶化すな」と叱られでもするのではないかと内心おどおどしていた。
仕事場へついてから、奥の部屋へ入ると社長が座っていた。
「おはよう」
「おはようございます。社長」
「今コーヒー飲んでるの、付き合いなさいよ」
彼女はいつものおおらかな調子で言う。
ハイ、と僕は答えて、テーブルについた。
「昨日ね」
僕に入れてくれたコーヒーカップを置くと、窓の外へ彼女は目をやった。
空はあいにく灰色だった。
雲の流れが速い。
「サンちゃん、49日だったのよ」
僕は驚いて、思わず目を見開いた。
「早いよねぇ…なんだか居なくなったのがまだ信じられないのに」
もうそんなに経っていたんだ。
「今にもココへひょっこりやってきそうなのにねェ 」
ハハハ、と彼女は笑う。
きっと誰より辛いのに。
僕だったらどうだろう?そんな親友ともいえるべき人間が、ある日病気になって必死に闘ったにも拘らず、看病の甲斐無く、逝ってしまったら…?
こんな風に気丈に振る舞えるのか?辛いのを隠して微笑むコトが出来るだろうか?
そんな思考がぐるぐると渦を巻いて、昨晩のコトを言いあぐねていたら、彼女はボソリと小さな声でこう言った。
「サンちゃん…ちゃんと成仏できたのかねぇ…迷ってないといいんだけど…」
「社長!」
もう我慢の限界だった。
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