木下闇

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  ********** 「お前、BOX棟がわ通ったの? あっちは行き止まりばっかだよ」  先輩に、地図アプリで見せられた道は確かに、山へ行き当たったり袋小路だったり。  もう一本外側の大きな道へ行かないと、大学裏には出られないようだった。 「それで? 目が覚めたら部屋だったっていうオチ?」 「は、ハイ……」 「夢でも見たんじゃねえの」  笑う先輩に、変な笑顔しか返せなかった。  目がさめればアパートのベッドで、外は夕焼け。  アイスは、ちゃんと冷凍庫に入っていた。溶けかけた形のまま。  ぶつかったあの人も、学内で見かけない。  顔も思い出せない。  僕は一体、何に遭ったんだろうか。 「そういやさぁ、こないだ一緒に飲み屋行ったアイツ知らねえ? 眼鏡の」 「え? 知らないです…」 「隣なんだけど、おとといから帰って来てないんだよな」 「はぁ……」 「名前ド忘れした。あいつだよ、図書館ばっか行ってた、あの」  図書館。  眼鏡? 本?  急に、鮮明に思い出す。  そしてあの笑顔も思い出して、さあっと血の気が引いた。 「あ? お前大丈夫か?!」  先輩には言えない。  もう二度と、あの道は通れない。 <終わる>
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