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「お前、BOX棟がわ通ったの? あっちは行き止まりばっかだよ」
先輩に、地図アプリで見せられた道は確かに、山へ行き当たったり袋小路だったり。
もう一本外側の大きな道へ行かないと、大学裏には出られないようだった。
「それで? 目が覚めたら部屋だったっていうオチ?」
「は、ハイ……」
「夢でも見たんじゃねえの」
笑う先輩に、変な笑顔しか返せなかった。
目がさめればアパートのベッドで、外は夕焼け。
アイスは、ちゃんと冷凍庫に入っていた。溶けかけた形のまま。
ぶつかったあの人も、学内で見かけない。
顔も思い出せない。
僕は一体、何に遭ったんだろうか。
「そういやさぁ、こないだ一緒に飲み屋行ったアイツ知らねえ? 眼鏡の」
「え? 知らないです…」
「隣なんだけど、おとといから帰って来てないんだよな」
「はぁ……」
「名前ド忘れした。あいつだよ、図書館ばっか行ってた、あの」
図書館。
眼鏡? 本?
急に、鮮明に思い出す。
そしてあの笑顔も思い出して、さあっと血の気が引いた。
「あ? お前大丈夫か?!」
先輩には言えない。
もう二度と、あの道は通れない。
<終わる>
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