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もう少しで緑のトンネルになれそうな道は、少し入っても先が見えなかった。
奥の暗さに、目が慣れない。
ふと、木下闇、という言葉を思い出した。
夏の強い日差しで、木陰が真っ暗に見えるというあれ。
風のせいか、ざわざわと影が揺れている。
でも、涼しげなそこへ、なぜか足が進まない。
目が慣れてくると、奥に何か見えた。
人影。
たぶん、子供だ。小学校低学年くらいの。
しゃがんで顔を覆っている。
白い塀が作る角で一人、泣いているみたいだ。
近所の子かと思って、周りを見回してみる。
けれど。
「あれ……？」
近くに家の入り口なんて無かった。
塀に囲まれ、どの家も背を向けた、行き止まり。
小さな子はまだ僕に気がついていないのか、まだ声を押し殺して泣いている。
僕が泣かしたみたいじゃないか。
やっぱりこの道はやめて、早いところ逃げてしまおう。
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