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「やめろ!」
凛とした男の声が、それを遮った。
声を上げたのはもちろん、女性を襲っている六人ではない。
声が聞こえて来たのは公園の入り口だ。制止の声に、不良男六人と、襲われていた女性が顔を上げる。
公園の入り口で、そんな彼らを睨む男の姿があった。電灯のほとんどない公園では、離れたところに立っている男の顔はよく見えない。ただ彼は、春の温かな気温であるにも関わらず、ぴっちりとコートを着こなして、体を覆い隠しているのだった。
「……なんだよ、お前」
せっかくこれから、という気分を削がれて、女性に馬乗りになっていた不良男が舌打ちする。
「文句あんのか? ああ?」
男を睨み付けてガンを飛ばしながら、馬乗りになっていた彼は立ち上がった。
「警察か? ああ? そうじゃねえなら引っ込んでな」
不良男は大股で男に近付いていく。
自分達が犯罪を行おうとしていることを非とせず、止めた男を邪魔とする。彼らのルールこそ、彼らの常識なのだ。
「いい格好したいだけなら消え……」
男へ歩み寄っていく不良男の動きが、そこで止まった。
にやにやと成り行きを見守っていた不良男達の目の前で、男のすぐ前まで歩み寄った不良男の体が崩れ落ちる。
「なん……だと……」
突然のことに、不良男達は愕然と目を見開いた。
しかも、だ。
次の瞬間、凄まじい風が彼らに襲い掛かった。
「うわっ!」
突風に思わず目を瞑り、顔を庇う不良達。そして目を開けたとき、彼らが拘束していたはずの女性は、そこから消えていた。
代わりに残されているのはコート。突如現れた男が着ていた、それである。
「なっ……」
「嫌がる女性を無理やり襲うなど、貴様らは男の風上にも置けん」
間近で聞こえて来た声に、不良男達が身構えながら顔を上げる。
そこには――
満月を背景に女性を抱き抱えた、紐パン一丁の男が立っていた。闇に紛れて見えなかったその顔も、今は月明かりに照らされてよく見える。
白いブリーフをマスクのように被って顔を隠した、男の顔が。
「へ、変態だ!」
「変態仮面だ!」
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