変態は深夜の公園で

3/9
前へ
/9ページ
次へ
「やめろ!」  凛とした男の声が、それを遮った。  声を上げたのはもちろん、女性を襲っている六人ではない。  声が聞こえて来たのは公園の入り口だ。制止の声に、不良男六人と、襲われていた女性が顔を上げる。  公園の入り口で、そんな彼らを睨む男の姿があった。電灯のほとんどない公園では、離れたところに立っている男の顔はよく見えない。ただ彼は、春の温かな気温であるにも関わらず、ぴっちりとコートを着こなして、体を覆い隠しているのだった。 「……なんだよ、お前」  せっかくこれから、という気分を削がれて、女性に馬乗りになっていた不良男が舌打ちする。 「文句あんのか? ああ?」  男を睨み付けてガンを飛ばしながら、馬乗りになっていた彼は立ち上がった。 「警察か? ああ? そうじゃねえなら引っ込んでな」  不良男は大股で男に近付いていく。  自分達が犯罪を行おうとしていることを非とせず、止めた男を邪魔とする。彼らのルールこそ、彼らの常識なのだ。 「いい格好したいだけなら消え……」  男へ歩み寄っていく不良男の動きが、そこで止まった。  にやにやと成り行きを見守っていた不良男達の目の前で、男のすぐ前まで歩み寄った不良男の体が崩れ落ちる。 「なん……だと……」  突然のことに、不良男達は愕然と目を見開いた。  しかも、だ。  次の瞬間、凄まじい風が彼らに襲い掛かった。 「うわっ!」  突風に思わず目を瞑り、顔を庇う不良達。そして目を開けたとき、彼らが拘束していたはずの女性は、そこから消えていた。  代わりに残されているのはコート。突如現れた男が着ていた、それである。 「なっ……」 「嫌がる女性を無理やり襲うなど、貴様らは男の風上にも置けん」  間近で聞こえて来た声に、不良男達が身構えながら顔を上げる。  そこには――  満月を背景に女性を抱き抱えた、紐パン一丁の男が立っていた。闇に紛れて見えなかったその顔も、今は月明かりに照らされてよく見える。  白いブリーフをマスクのように被って顔を隠した、男の顔が。 「へ、変態だ!」 「変態仮面だ!」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加