1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぅ……」
変態男は肩を竦めながら息を吐き出すと、月の輝く夜空を仰ぐ。
「今宵も、この街の平和は守られた」
変態男は、女性を助けようと風を起こすために使ったコートへ歩み寄ると、それを拾い上げて勢いよく羽織った。
「あ、あの……」
すると、地面にへたり込んでいる女性に、話しかけられた。
「あ、ありがとうございました。あなたのおかげで、わたし……」
じわりと両目に涙を浮かべ、女性は変態男を見上げる。
「あなたのお名前は……?」
「名乗るほどの者ではない」
「そんな……」
変態男は、羽織ったコートを脱ぐと、女性に歩み寄った。引き千切られて上半身が露わになっている女性の肩へ、そのコートをふわりと載せる。
「――そうだな、敢えて名乗るとするならば」
女性に背を向けた変態男は、一度女性へ振り返り、
「掃除屋(スイーパー)とでも、呼んでくれ」
そう言い残して颯爽と、前の破れた紐パンと、ブリーフの姿で、去って行った。
「スイーパー……変態……変態だけど……」
肩に掛けられたコートを握り締めて、女性はただただ、去って行った変態男、もとい掃除屋の男の背中を見送った。
コートの裏ポケットから重い音を立てて、アナル用バイブが転がった。
* * *
最初のコメントを投稿しよう!