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私と妹は、昔からなんでもはんぶんこだった。 おやつのケーキも誕生日プレゼントの人形も、父に肩車してもらう秒数も母に抱きしめてもらう回数も、思い起こせるものはたいてい二人で分け合っていた。 さすがに学校の教科書は自分だけのものを買ってもらえたけれど、国語辞典や英和辞典は二人に一冊だったし、自転車も二人に一台だった。 洋服やバッグも同じものを共有していたし、高校に上がるまではベッドだって同じだった。 「双子なんだからいいでしょ」と母はどこか楽しげでさえあったが、私はこのはんぶんこがたまらなく嫌だった。 なぜなら、厳密には、はんぶんこではなかったからだ。 半分にナイフが入れられたケーキを先に取るのはいつも妹で、彼女は迷わず多少なりとも大きいほうを選んだし、交代で遊ぶはずだった人形は、週に一度くらいしか私のもとにはやってこなかった。 習慣なのか愛情の差か、先に妹を肩車する父は私の番になった時には既に疲れきっていて、私はすぐに降ろされてしまった。 母にぎゅっと抱きしめてもらいたくてキッチンに行くと、「さっきもしたでしょ」と言われる。妹が私に成り代わって、私の分まで抱きしめてもらっていたのだ。 国語辞典も英和辞典も、自分の授業が終わったら相手に渡しに行く約束だったのに、妹が私のクラスまで来たためしはない。 「私のほうが速いし上手い」というよくわからない理由から、親の見ていないところで自転車に乗るのはきまって妹だった。 服もバッグも共有という体をとってはいたものの、親が買うものは自ずとおねだり上手な妹の派手な趣味に寄り、結局私は自分の身の丈に合った地味な服を自腹で買いそろえる羽目になった。 真冬の夜には毛布を奪い取られ、何度風邪を引いたかわからない。 これは、はんぶんこなんかじゃない。 あきらかに、私が損をしている。 いや、あきらかではない。ほんの少しだ。 要領のいい妹は、親や周囲に気づかれないようきわめて巧妙に私の取り分を掠め取っていた。
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