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当然、気分はよくない。 小学生の時に一度、堪りかねて母に訴えたことがある。 返ってきた言葉は、「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」という血も涙もないものだった。 双子という同条件のもと、はんぶんこのルールに甘んじてきたのに、ほんの数分早生まれであることを理由に我慢を強いられたのだ。 理不尽な扱いが悔しくて、その夜はこっそり涙したが、それ以来、抗議することを辞めた。声を上げても何も変わらないなら上げるだけ無駄だと、子供ながらに悟ったわけだ。 諦めに肩を落としたまま、中学に入り、高校を出て、大学卒業と同時に一人暮らしを始めた。 居心地の悪い実家を出て、もう五年になる。 自宅と実家とは電車で何駅かの距離だが、一度も帰っていない。たまには帰って来なさいと言われても、仕事が忙しいだの、体調が悪いだの、何かと理由をつけては拒んできた。 メールも電話も年に数回、母と交わすだけだった。妹天下の実家とは、距離を置きたかった。 その妹が結婚するという報せを受けたのは、今日の昼のことだった。朝に母から着信があったので、昼休みに不承不承かけなおした。 突然の報告に驚いていると、電話の向こうで母が笑いながら言った。 「じつは、釣書の宛名をよくよく見たら、お姉ちゃん宛でね。でもまあ、同じ顔だしいいかってお会いしてみたら、とんとん拍子に話が進んじゃったのよ」
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