【カラフルビーダマ弁当】

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【カラフルビーダマ弁当】

【クック】の作り方 *材料* 醤油…ひとさじ 大根…好きなだけ ただの水…大さじ一杯 オロ●ミンC…50本 謎の黒い球体…丸ごと一個 愛情…表現できるところまで 雑草…ひとつまみ ーーーーーーー… ーーーーーー… 「伊達くんお腹空いたし私これ食べたいんだけど…」 放課後の教室でメガネをかけた少女、田中陽菜(たなか はるな)は僕にレシピ本を見せて来た 正直レシピ本を見ても何が書いてあるのかよくわからない …決して文字が読めないわけではない ただ内容がよくわからないということなのだ そんなわけでメガネをかけた僕、伊達輝夜(だて かぐや)もメガネを押し上げながら答えることにした 「残念だが田中くん、僕にはその【クック】というものは作れないよ そもそもの話、君が毎回出してくるレシピ本は一体何なんだい ? この間なんて【ゼラチン星人アヒルくん】という内容の料理とも思えない レシピ本を見せられたわけだがこんなレシピ本一体どこで売ってるんだい?」 「えっ…購買だけど」 思ったより近場だった あそこの購買何売ってんだ!!ちくしょう!!!! というかお腹が空いてるんだったらレシピ本じゃなくて焼きそばパンとか買ってろよ!!!!!! うっかり 叫びそうになるがその叫びをギリギリのところで飲み込む 「そもそも、だ 田中くん、なぜ僕が君に料理を作るという話になっているんだい? いつも言っていることだが僕に料理はできないぞ」 「普通にお腹が空いたから伊達くんならいけるかと思って…」 いけねぇよ! またうっかり叫びそうになった 喉どころか口の中にまで出かけた 言葉を飲み込み深呼吸をする そして気を取り直して彼女に向き直る 「…田中くん」 「ふぁい、ふぁんでひぅ?」 「何を…食っているんだ?」 再び目を向けた彼女は頬いっぱいに何かを頬張っていた すごく硬いものなのか凄まじい破砕音が陽菜の口の中から聞こえる 「…【ぽめぽめぷんぷん】だけど?」 「…それは食べ物なのか?」 口の中の『モノ』を飲み込んだ後 彼女は答える …全く答えになっていないと感じた 「なぁ田中くん、食べるものがあったんなら僕に言う必要…あったのか?」 「うん、食べ物ポケットに入れてたの忘れてた」 「そう…か」 もう色々と疲れてきた いつもそうだ 放課後、彼女と会話するとよくわからない食べ物の話をする 普通、食べ物の話をすればお腹が空くものだがマイペースに喋る彼女が言う『食べ物』というのは聞いていてもあまりお腹が空くことはない むしろ 空腹がひくぐらいである …そういった意味でも共感できず困ってしまう きっとこれからも理解できないのだろう そう漠然と思っていると田中陽菜は立ち上がる 日も暮れ始めたしそろそろ帰る時間だ 僕も立ち上がる 「あ、そうだ」 教室を出る手前、彼女が扉の前で立ち止まる そして振り返ってこう言った 「『また』今度、伊達くんにも弁当作ってきてあげるね」 はにかみながらそう言って教室から出ていった 僕はメガネを押し上げ息を吐き小さくつぶやく 「…『あれ』は食べ物じゃねぇ」 好きな子の弁当でも嬉しくはない これからは自分も料理ができるようになろう そう伊達輝夜は夕日に強く誓った
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