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物々しい男らは腰に刀を下げている。さすがに槍は持っていないが、鎧は傷がついていて、泥などの汚れも付着している。汚いし、はっきり言って臭う。なんだっていうんだ?
「いや、此度は危のうございましたな」
「まったく、あやつも小賢しい策を弄するものよ」
「殿の前では、あんなもの策とは呼べぬわ。天下人などと分不相応に呼ばれて、すっかりたるんだようじゃのう」
「で、あるか」
その集団もまた、雑談染みたことを話しながら地下鉄の奥へと進んでいってしまった。天下だの策だの、どういう会話だ? 今しがた一戦おっばじめて勝ってきたような口ぶりだった。
今日は本当に変な客が多い。降りた方がいいだろうか。
いや! 俺に被害があるわけでもない。こんなことで簡単に降りてしまうなんて、馬鹿らしいじゃないか。もう少し乗っていよう。
そう決めたのも束の間、揺れていた地下鉄が、大きく揺れた。何事かと思ったが、老紳士は動じていないし、他の車両から騒ぎが聴こえるわけでもない。
「次は、平成、平成」
あれ、急に現代に戻るのか? というか今の揺れはなんだよ?
駅に停まると、数人の男らが乗ってきた。しかし、その服装は少し変わっていた。スーツに見えるが、ボタンがない。そしてスラックスと一体になっているつなぎのような格好だ。見たことがない服装だ。
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