揺られて揺れて

6/8
前へ
/8ページ
次へ
 そして男らは何かを話しているが、まったく話している内容が分からない。どこの言語か分からないためだ。初めて聞くその言語は、英語とは違う。中国語とも違う。言語なのか疑わしいほど、聞き取りにくい。  男らは同じ車両の、離れた席に座った。  駅から動き出した地下鉄はどこに向かうのか。さっき平成といっていたが、今度は一体どこに行くのだ? 「次は――です」  車掌のこと言葉は、奴らと同じに思えた。まるで意味の伝わらない未知の言語で、次の目的地を言ったのは間違いないだろう。  一体今度はどんな奴らが乗ってくるんだ? 俺は少し、乗り込んでくる人を見るのが楽しくなっていた。だから、乗車口を童心に帰ったように、楽しみながら眺めていた。  少ししてまた停車すると、そう、ずっと乗車口を見ていたせいで、それをはっきりと見てしまった。  今度は人の形をしたものが入ってきた。銀色の肌で、腕は触手のように蠢いていた。目も口も鼻もない。これはなんだ? 心臓の鼓動が早まる。髪や毛の類はなくて、足は植物の根のようだ。銀の肌が虹色に変色しながら波打っている。汗が零れてくる。視界が外せない。歩く音は非常に不快で液体が零れたような音が聴こえてそして隙間風のような息遣いがどこからか聴こえて耳に障る、ああいやだ恐ろしい恐ろしい恐ろしい! 奴に眼はないのだが俺を見ているのではないかと思うほどでそれを感じた時俺の頭の中は――。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加