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意識が薄れた中で、誰かに肩を叩かれのを感じて目を開ける。
「うわあ!?」
思わず声を上げてしまうが、目の前にはあの老紳士が立っていた。
「もう、終点ですよ」
「え、ああ、ああ、どうも」
終点って、俺は寝ていたのか? はっきりと起きていたつもりだったのに、今までのは夢だったのか?
背広が汗で湿っている。悪夢とはあのことだ。最後に見た物だけ、特別恐ろしかったはずなのに、今では姿形がはっきりと思い出せない。
老紳士と共に地下鉄を降りると、いたって普通の、と言ったらおかしいが、見慣れた現代人達が往来している。スマホを片手に通話したり、ゲームをしたり。忙しなさそうに早足の男や、買い物帰りの主婦もいる。
平和で、いつも通りの、普段通りの光景だ。言葉もちゃんと日本語で、現代の持ち物で、現代の服装だ。
安堵で自然と溜息が出た。それを聞いたのか、老紳士が俺に話しかけてくる。
「失礼。地下鉄に乗っていた時、どこへなりとも行きたいと、思いませんでしたか」
「え? ああ、まあ」
「ははあ、成程、では奇妙なものを見たのでは?」
「分かるんですか!?」
「随分と憔悴しておられるし、実は私も経験がありまして」
「まさか、今の地下鉄にはそういう都市伝説かなにかあるのですか?」
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