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「あぁ、今日も半月か」  周期的な月の満ち欠けは、幸福だった時間が経過してしまったことを嫌でも俺たちに知らしめる。彼女が『今日も』と言った半月は、おそらく前回見たものと逆の月だ。 「私も……やめよう。ごめんね、どうも考えが暗い方にいっちゃうね」 『私も半分になっちゃった』  そう言うつもりだったんだろう。彼女は今日まで二人で一つの体で過ごした。それは他の人から見れば短すぎる時間だけれど、心に痛みを感じるには十分だ。 「月はいつも同じ形だよ。太陽光の当たり方で、こっちから見える部分が違うだけ。中学校で習っただろう?」 「そんなことわかってるよ。大ちゃんはロマンがないんだから」 「智子はロマンチスト過ぎ。まぁ、二人足して割ったら丁度いいくらいじゃない?」 「そうかもね」  何も変わったことなどない。俺たちの関係も、互いに向けあう愛情の大きさも。遠回しに伝えた俺の想いは、果たして彼女に伝わるだろうか。  とても悲しいことだけど。いなくなった子供には申し訳ない考え方かもしれないけれど。この辛さを一時忘れられるなら、初めから二人きりだったと思えばいい。  二人だけで十分幸せだと言い張ることは世間的には負け惜しみになるかもしれない。けれど、そう考えることだけが俺たちが幸せになれる唯一の手段で、尚且つ正直な俺の想いでもあった。
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