プロローグ

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「あなた、探偵部に入りませんか!?」 ──非常に面倒くさいものに捕まった、と素直に思った。  僕がこの新明高校に入って1ヶ月程度で、クラスで話題になっていた『探偵部』。  なんでも同じ新入生の子が立ち上げようとしているらしいとは聞いていたけれど、自分には関係ないことだと決めつけていた。  目をキラキラと輝かせて校門でキャッチをやっているのは知っていたが、まさか僕がそれに捕まるなんて思わなかったからだ。  控えめに言っても僕は周りから見れば目立つタイプでもないし、声をかけられたくないオーラ全開だった自覚もある。  ところが彼女はそんな僕の纏うオーラをぶち抜いて気さくに話しかけてきてしまった。 「え、えっと……」  ここで僕は2つの致命的ミスを犯す。  1つは、声をかけられて立ち止まってしまったこと。  キャッチなどで大切なのは相手に立ち止まらせて話を聞かせること。それをわかっていたはずなのにそうしてしまった。  そしてもう1つは、返事をしてしまったこと。相手に聞く意思があると思わせることをしてしまったこと。  この2つをしてしまったときの彼女のしてやったり顔を僕は忘れない。 「あなた、同じ新入生ですよね!? 部活、決めてないんですか! だったら今! オススメの! 部活はいかがでしょうか!? 今だったら副部長の座もついてきますよ! 下の人をこき使えるかも知れませんよ!」  それはつまり、僕以外の部員はいないということで、副部長という名の雑用をやらされる可能性が高いことを瞬時に理解した。 「ご、ごめん。僕、部活に入る気はないから」  急いで話題を切り上げ立ち去ろうとして、 「ま、待ってください!」  裾を捕まれた。両手でガッチリと。 「い、今すぐ入部希望者がいないと、部活が立ち上げれないんです! 同好会すらできないのです! お願いします! 名前だけでもいいのでお願いします! 少しだけですからぁ!」  泣きすがられた。それも校門の前で。  現在は朝の登校時間。故に周りには多くの生徒がいる。  そこで僕と彼女に集まる多くの視線。たまったものではない。  イヤイヤと首を横に振る度に揺れる彼女のお下げ髪が今は視線を誘導する道具にしか見えない。
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