0人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから1ヶ月後、母から聞いた突然の知らせに、私は思考が追いつかなかった。
「お母さん、亡くなったって」
───────おばあちゃんが、死んだ?
ぶっきらぼうにそういう母の顔は、悲しそうに歪んでいた。涙が出るのをまるで必死に抑えているみたいに。
母が泣くのを、私は今まで見たことがない。
そうか、本当なんだ…………理解に何分も時間を要した。
いつも明るい里が、なんだか暗い雰囲気だったのはそのせいか。
おばあちゃんは、みんなに愛されていた。自由奔放だが、いつも誰にでも優しかったおばあちゃん。まだまだ元気いっぱいで、まだ死なないって思ってたのに。どうして……!
気がついたら、おばあちゃんの家の前だった。1ヶ月前、最後にここでおばあちゃんと話した。
あぁ、もっと話しておけばよかった。もっとぎゅうって抱きしめればよかった。おばあちゃんがどこかへ行くのを引き止めていれば、まだ生きていたのかな…考えれば考えるほど後悔と寂しさが襲ってくる。それでも不思議と涙はこぼれなかった。
家の中に入ると、いつも嗅いでいたおばあちゃんの香りがした。それは旅の香りだった。旅先での、いろんな香り…おばあちゃんはそれらを全部持ち帰って、部屋にばらまいていたのかな。きっと素晴らしい人生だったんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!