プロローグ

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山へ向かう準備を早々に済ませた俺達は、朝早くに旅館を出発した。 今日は朝からすごく天気が良くて、一歩外に出ると、もう春を迎えるんだなぁとしみじみと感じる暖かさがあった。 旅館から山まではバスで行った。山への道のりにはいろんな風景があった。バスに乗ってすぐ、畑が見えた。まだ何も植えられていないが、手入れされた綺麗な畑だった。その先に菜の花が広がっていた。 山に近づくにつれて、冬の名残が見えてきた。雪がまだ少し溶けずに残っている。ここら辺の外は冷えているのだろう。 1時間ほどバスに揺られて、そこから数十分歩いたら、山の麓が見えてきた。旅館とは全然気温が違う。頬を撫でるヒンヤリとした風が、気持ちよくさえ感じられた。 このあたりはまだ雪が沢山残っていて、さっき通った、雪が残っていた道よりもずっと冬の香りがした。もしかしたら天気が悪くなるかもしれないな、なんて思いながら、ゆっくりと一歩踏み出した。 案の定、山に登り始めるとすぐに天気が悪くなってきた。しかしそれも山登りの醍醐味だと、楽しい気持ちでいっぱいだった。 途中に岩を見つけたので、そこで雑談をしながらお菓子の袋を開ける。一緒に来た岡野はすぐに1袋を空にしてしまった。それを山部と芳樹が見て驚く。みんなで笑う。…楽しい時間だった。 みんなで集まることが出来なくなると思うと、貴重な時間なのだなとふと考えてしまう。きっと他の3人もそうなのだろう。 少し肌寒いが、心はなんだかじんわり暖かくなった。
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