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「はぁ……」
ため息をついた俺は、洞窟へ戻る。が…
「ん…………?」
何かが違う。雰囲気というか、温度感というか…とにかく何かが違うのだ。俺が洞窟を出た時とは。
周りを見回してみる。すると、
「やっと気づいたね!こんにちは!」
白い髪の女性が、俺に向かって手を振っていた。
にかっと笑った彼女の顔は、なんだか今日の日差しのように暖かかった。
「…………誰?」と問う。
「誰でしょうー!」と答える。
こういうやりとりが基本めんどくさい俺は、ため息をついて無言で中に入り、腰掛ける。
「あー!ごめんって!私はさ、妖精だよ!君は信じる?!」
「は??」
ばかばかしい。付き合ってられるか。
「君も遭難したの?」と聞いてみる。今度は俺が「は?」と言われる番だった。
「妖精だって言ってるでしょう?人の言うことは信じないとさー」
と、冷たい目で見られるほどだった。あの明るい笑顔とは全く逆の、突き刺さるような目だった。こわい。
とりあえずぼっちでこの洞窟の中で助けを待つよりはマシかと思い、彼女と一緒にいることにした。
「で、どういうこと?君が妖精だとか。俺信じられないんだけど。」
彼女はにやりと笑う。歳は俺と同じくらいか少し下くらいに見えるのに、彼女のコロコロ変わる表情を見ていると、小さな少女と接している気分になった。
「聞きたいの?」
「うん」
「じゃあ教えてあげるよ。私はね───」
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