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私は生まれた時から、羽というものがなかった。周りを見れば羽を持って飛んでいる妖精だらけ。それは大人だけじゃなくて、同じくらいの子達の間でもそうだった。私だけ飛べない。親も、友達も、みんな飛べるのに。
小さいながらに人と違うことに気づいていた私は、自信をすっかりなくしていた。
私たち雪の妖精は、雪や氷を自由に操ることが出来る。もちろん寒さなんて感じない。
妖精の大半は雪の里に住んでおり、たまにスキー場だったり雪国だったりに訪れる。
私たちは人間やほかの動物とは違い、死を迎える時期がものすごく遅い。100まで生きる人間と比べたら、その何倍も長く生きられるのかもしれない。でも同じように毎日を暮らしているだけの私たちには、何年生きたかなんて関係ない。
ある日、おばあちゃんから呼ばれた私は、おばあちゃんの住む家に向かった。
おばあちゃんは、たった一人の私の理解者だと言える。素直に私が言うことを聞くのもおばあちゃんくらいだ。皆が私を見下した目で見るのに対し、おばあちゃんだけは私を可愛がってくれた。おばあちゃんはここから出たことのない私に、いろんなことを教えてくれた。知らない景色や、音や、言葉なんかを。
おばあちゃんは木に小さな空洞が空いていたのを利用して、雪をつめて家を作り、そこに住んでいる。普段はそこで暮らしているのだが、たまにふらっとどこかへ出掛けて長いこと帰ってこないこともよくある。私がおばあちゃんに会うのも、ずいぶん久しぶりだった。
私が小さい頃から、おばあちゃんは自分が旅した場所のことだったり、昔のことだったりなんかも教えてくれた。昔のことっていうのは伝承のようなもので、おばあちゃんが生まれる前のこととか──例えば……そう、動物として暮らすようになった妖精がいる、とか。雪の妖精が花の妖精や水の妖精と結ばれたことがある、とか。そうやっていろんなことを教えてくれるおばあちゃんが大好きだったから、おばあちゃんがこっちにいる時はずっとひっついて回っていた。そうやって、私はいろんなことに対する知識や興味を、他の人より多く持ってしまったんだと思う。
この世界にはまだまだ私の知らないことがある…そう思うとワクワクする。こんな誰にも愛されない狭い世界を飛び出して、おばあちゃんみたいに、いろんな場所へ自由に行きたい。
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