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「な、何で……!」
意気揚々と家を後にして、早三十分。僕は今、人生最大の危機に立たされていた。
天候は申し分ない。雲一つない、絶好の入学式日和だ。
しかし……しかしながら!
「開かない!!」
門は黒々して高くそびえ、厳格な空気を纏いながら……閉ざされている。
準備万端でウキウキしていた僕は、すっかり取り乱していた。
さっそくトラブルかよ! 準備は万端だったのに! 【高校デビューやってやろうじゃないか!プロジェクト】って何だよ! 勝手にやってろ!
ではなく。一旦落ち着こう。深呼吸、深呼吸。
「……」
「何故門が閉まっているのか?」それが、今現在僕が向き合うべき問題だ。
もしかしたら、閉まってないかもしれない。物は試しだ。押したり引いたりしてみた。
開かない。
学校を間違えた? いや、ない。試験の時に来たはずだし、門の脇にしっかりと学校名が書いてある。
日にちを間違えた? 実は明日だった、とか。
それもない。受け取った手紙には、今日だと書かれていた。念のため、端末で日付を確認する。
合っている。確実に今日、この場所で、入学式が行われるはずだ。
なのに何故、僕は中に入れない? そもそも他の入学生はどうしているんだろう?
辺りを見渡しても、人の気配はない。車の通りもなく、僕一人。これじゃあ、まるで……。
心の底にどろり、と粘着質な感情が溜まり出す。
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