0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
僕は首を振って、嫌な感情を吹き飛ばした。
ふと上を見上げると、ひらり。
蒼が視界を横切った。それは、蝶だった。
鮮やかな蒼の翅を持つ、美しい蝶。見惚れているいると、蝶はひらひらと飛んで、門の隙間を潜り抜けた。
と、同時に
「!?」
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイと軋む音を立てて、今までびくともしなかった門が開いた。
遠隔操作型の門だったのか、それとも蝶の魔法か。
「どっちにしても、不思議だ」
僕は前者を信じることにして、中に入った。
春の日差しがうららかに、木漏れ日となって降り注ぐ。木々に囲まれた道をしばらく行くと、真っ白な建物が見えた。
ガラス戸を開けると、ボードがあった。新入生を歓迎する祝辞と、クラス分けの紙が貼ってある。
僕のクラスは八組だった。教室は四階の、一番奥だ。
上履きに履き替えて、階段を上る。四階まで上るのって、いい運動だ。
静かな教室をいくつも通り過ぎる。廊下にずらりと並ぶロッカーを横目に、辿り着いた八組の教室。
そっと扉を開けると、規則正しく並べられた机と椅子が見えた。他の教室と同じく、人はいない。
一人きりには慣れている。
黒板に掲示された座席表を見る。
記念すべきこの学校での一番最初の席は……教卓の前! つまり、一番前でなおかつ一番真ん中の席ってことだ。
椅子に腰かけ、机に頬杖をつく。窓から差し込む春の陽気に包まれていたら、何だか眠くなってしまった。
みんなが来るまで、眠っていてもいいよね。
最初のコメントを投稿しよう!