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視線が痛い。背中越しにナツキがにこにこと笑っているのが分かる。
サキが戻ってきて、プリントや教科書を配っているのだが、後ろの人に渡すのに、後ろを向きたくない。
ナツキのいない方向から回そうと、横を向いた。
「!」
開いた窓から入ってくる風に、揺れる髪。天使が、そこにいた。
長い髪は白に近い金の色。大きな瞳は蒼の宝石でも填め込んであるかのようだ。
目が合って驚いた表情は、すぐに笑顔に変わる。
「はじめまして」
何てことはない言葉なのに、彼女の口から洩れると歌のような……
「ト・ワ! 早く配りなさい、後がつかえてるんだから!」
サキに教科書で頭を小突かれた。
「あ、はい」
配れって言われても、後ろの席に、人がいないんだけど。
どうやらこのクラスには、入学式をすっぽかす人間が少なくとも三人いるようだ。
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