【高校デビュー以下略プロジェクト】

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 教科書の山を抱えて、僕は廊下に出た。  ロッカーは大きく、小柄な人間なら入れそうだ。教科書を足元に置き、ロッカーを開けた。  ガチャ 「「……」」  蒼い瞳がこちらを見つめている。  状況が飲み込めない。じっと見つめていると 「ご、ごめんねっ! すぐ移動するから!」  凄い勢いで扉を閉められた。 「……え、何、今の」  予想できない状況に遭遇すると、人間は何もできなくなるようだ。一つ、賢くなった。  というか、移動するなら扉閉める必要ないんじゃないかな!?  勢いよく扉を開けた。 「あれ?」  そこには、誰もいない。 「まさか……幽……れ」 「何してるの」 「うわっ!」  突然掛けられた声に、心臓がばくばくと音を立てる。 「何」  見れば、サキだ。 「ごめん。幽霊かと思って」 「幽霊? まだ、真昼間じゃない」 「そういう問題じゃないよ」 「見たの、幽霊?」 「そう。ロッカーの中に」 「ロッカー?」  サキが中を覗き込む。 「何もないけど」 「さっきいたんだよ……」 「見間違いじゃない? それとも、まだ寝ぼけてるとか」  サキは「しっかりしなさいよ」と言って、教室に戻って行った。 「見間違いじゃないと思うんだけどな……」
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