【高校デビュー以下略プロジェクト】

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「あれは人間だよー」 「!?」  至近距離の声に驚いて振り返る。 「近い!」  ナツキがいた。学習しないな、僕は。 「ロッカー開けたらエンカウントとか。ドンマイ、トワ君」  君の怖さが、幽霊を上回ったよ。 「いつからいたの」  ナツキは唇を尖らせた。 「教室を出てくる時にくっついてきたんだけど。気付かなかった?」 「……気付かなかった」  声がするまで。 「俺の影、薄いのかな?」  ナツキが不満げにぼやく。  その影の薄さは、生かした方がいいと思うよ。例えばほら、バスケとか? 「何で僕の後ろにいるの?」 「うん?」  ナツキは顎に手を当てた。 「落ち着くからかなぁ」 「僕の後ろが?」  理解できない。 「俺ね、人の背後に回り込む癖があってさ」  忍者か、暗殺者か。 「今までたくさんの人の背後に立ってみたけど、トワ君の後ろが一番居心地がいーよ」 「……それって喜ぶべき?」 「誇っていいよ! ベスト・オブ・ハイゴ二ストだね」  ベスト・オブ・ハイゴ二スト……。該当する人が限られる賞だな。 「そういう訳で、背後を間借りするね、トワ君」  幽霊に驚いていたら、背後霊をくっつけてしまった。  前を向いていたら、気配をほとんど感じない。これはこれで怖い。
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